Zeiss ZX-1は台湾ではきわめて珍しいカメラでありながら、神秘的で心を強く惹きつけます。Zeissが初めて完全に自社で開発したフルサイズのコンパクトカメラとして、今回は唐小見さんに、この独創性あふれるZeissのカメラについて語っていただきます。
著者:唐小見(Xiaojian Tang)

「影に浸り、思いのままに。」
少し前にご紹介したLoxia 25mmを覚えていらっしゃいますか?(まだご覧になっていない方はこちらからどうぞ)あの記事で、私はZeissへの夢について書きました。100年の歴史を持つ光学企業にとっては、私の夢などいくつも収まってしまうほど大きな夢でしょう。その中でもいちばんの驚きが、2018年の発表から今日まで、来る日も来る日も待ち焦がれてようやく手にしたZeiss ZX-1なのです。
【Carl Zeiss、ZX1】
1846年創業、現在175周年を祝うこの世界一の光学レンズメーカーは、写真家を魅了してやまない小さなブルーバッジを携え、21世紀に自社初となるフルサイズコンパクトデジタルカメラを発表しました。このカメラの出現は、成否にかかわらず、Zeissの歴史に太く刻まれる象徴的な一筆です。
史上初のデジタルフルサイズカメラは、Zeissが2000年に発表し、2002年に発売したN Digitalでした。当時まだ若く何も知らなかった私にとって、その革新性は心を深く揺さぶりました。けれども残念ながら、当時の私には到底手の届くものではありませんでした。だからこそ、2018年にZX-1が発表されたとき、私は「何としてでも手に入れる」と自分に言い聞かせたのです。
月日は流れ、BH、eBAY、露天などを何度も何度も眺めた末に、縁あってZeissの台湾総代理店である正成集團に問い合わせてみました。そして…………

(以下の写真はいずれも、多少のレタッチを施しています)
【第一印象】
Zeissはいつもどこか違います。ではZX-1はどうでしょう?「青」という一文字が、ZX-1を初めて手にしたときの感想のすべてを言い表していると思います。いつものZeissらしい、やや赤みを帯びて躍動するような鮮やかさとは違い、独特の憂いを帯びた、とても冷静で清らかな気質を感じました。Leica Qに似た雰囲気がありながら、さらに高嶺の花のように近づきがたい存在です。

その近寄りがたい雰囲気のまま、操作も超がつくほど割り切ったミニマルスタイルです。美しいアニメーションとともに15秒もかかる起動(のちにスタンバイ機能で素早く起動/スリープできることが分かりました)に、背面の物理ボタンがAEL/AFLの1つだけという仕様は、躍る気持ちにたっぷりの冷や水を浴びせてくれました。
【縁は続く】
このカメラの登場とくれば、やはり永遠の友(Sony)と永遠のライバル(Leica)との真っ向勝負は避けられません。Zeissがデジタルフルサイズの視野を切り開いたのだとすれば、Sonyはコンパクトなフルサイズカメラの元祖です。2012年、Zeiss 35mm F2.0を搭載して発表されたRX1の衝撃は、今でも思い出すと胸が高鳴ります。RX1の記事はこちらをご参照ください:『手のひらのフルサイズ RX1、短くも美しい出会い』。そして2015年にはLeica Qが、さらに大胆な28mm F1.7というスペックで颯爽と登場しました。この2台の伝説的なカメラが存在する時代に、私はずっと考えていました……ではZeissは? 自分たちのコンパクトなフルサイズカメラを、いつ出すのだろう、と。ついに2018年、Zeiss 35mm F2.0を搭載したZX-1が、一字違いの名でRX1の美しさと期待を引き継ぎ、最大のライバルLeica Qに正面から挑んできました。では、この唯一無二のカメラは、いったいどんなスペックで登場したのでしょうか。
Zeiss ZX1 主なスペック:
⦿ 37MP フルサイズセンサー・⦿ 255点のAFエリア・⦿ 感度 ISO 80〜51200・⦿ 連写は最大3fps・⦿ レンズスペック:Distagon T* 35mm F2.0(5群8枚)・⦿ 0.7インチ 1080p OLED電子ビューファインダー・⦿ 4.34インチ 92.1万ドット静電容量式タッチパネル曲面ディスプレイ・⦿ 512GBメモリー内蔵・⦿ 4K(3840×2160 30fps)と1080p 60fpsの動画撮影に対応・⦿ Android OS搭載、Adobe Photoshop Lightroom CCが動作
【LRとアップロード???】
Android OSを搭載し、Adobe Photoshop Lightroom CCが動作する――このスペックを見たとき、誰もが真っ先にストアを開いて、美圖秀秀や小葉子をダウンロードしたくなるのではないでしょうか。ところが実際に使ってみると、このあたりの設計は私にとってやや限定的でした。クラウドも編集も半ばクローズドな仕組みになっていて、個人のクラウドやスマートフォンへのアップロードは、長く調べたのに結局やり方が分からなかったので、ここでは紹介を省きます。Lightroomについては、Zeissは思い切って、ほぼすべてのカメラにあるピクチャースタイルの選択肢を取り払いました。撮影中に色を調整するオプションは一切なく、すべてカメラ本体での編集か、後からコンピューターでの現像に委ねられています。これはこのカメラの大きな特徴のひとつです。LRの編集機能で最初にぶつかる問題は、アカウントへのログインが必要なことです。PC版のアカウントはとうに忘れてしまっていたので、各種機能をざっと眺めることしかできませんでした(未ログインでは、スタイルの適用やガイド線といった機能は使えません)。その中でいちばん目を引いたのは、ワンタッチ補正とカスタムスタイルファイルという2つの機能が内蔵されていたことです。カメラ内で好みのスタイルに編集できれば、ほかの写真にもそのスタイルを適用して仕上げることができます。これは本当に素晴らしい。…………とはいえ、原始人のような私は、結局すべての写真をPCに移して現像しました。以下の3枚はカメラ本体で編集し、PCへ送って縮小してアップロードしたものです。



【実戦】



ところが、気まぐれに撮り続けるうちに、次第にその気難しい性格とゆったりしたペースに慣れていき、いつもの自分のスタイルとはまったく違うその質感を、だんだん愛せるようになってきました。
35mmのコンパクトカメラにとって、食べ物を撮るのは天職のようなものです。このカメラで撮る食べ物は、多くが青みを帯びて独特の物語性を帯びていますが、家に帰って少しレタッチしてみると、意外なほど、本当に質感豊かに仕上がるのです。


ボケ味を見たくて、わざわざ寄って撮った2枚。階調の移り変わりは繊細で自然です。


以前、ある先輩が「Zeissのレンズはどれも、立体感と色の移ろいをじっくり味わう価値がある」と言っていました。当時ZAレンズをよく使っていた私は、その言葉を実感できずにいましたが、思いがけずZX-1で、まぎれもないZeissらしさでありながらどこか違う、その味わいに出会えたのです。


ZX-1の立体感は、実は微妙にコントロールが難しいところがあります。中距離のF2.0では空間の奥行きを作りやすいのですが、パンフォーカスになると、うっかり少し平たくなってしまうこともあります(下の3枚のように)。



やがて私はこのカメラの「色の暗号」に気づきました。言葉では言い表しにくい艶やかさと、繊細な質感。その2つが、本来強く際立つはずの立体感を、中判カメラのような、淡々と語りかけるのに一枚一枚忘れがたい味わいへと溶かし込んでいるのです(もちろん、X1Dを持ち出して比べればまだ及びませんが……)。そしてZX-1の撮って出しの色は、私にとって一種の鍛錬になりました。環境の光源を自分の構図の発想に取り込むことに、より挑戦するようになったのです。



そんな練習を重ねるなかで、まるで昔の、写真への純粋な憧れと、撮り続けたいという尽きない喜びに立ち返ったような気がしました。




旧正月の最終日、ようやく太陽が出てきました!!



私は人が歩く姿を撮るのが好きで、前かがみや後ろに反った感じも好きです。そんな撮り方を自分のスタイルとして「ふわり人」と呼んでいます。今回はそんな“ふわり人”をたくさん撮れて、とても嬉しかったです〜

これだけ実戦で使ってきたのに、人を撮る機会はあまりありませんでした。カメラがまだ温まりきらないうちに、どうしても熱いうちに皆さんへ紹介したくてたまらなくなったので、参考までに数枚だけ添えておきます。


本当は長所と短所の概要を簡単にまとめるつもりが、結局これだけ大きなスペースで写真を貼ってしまいました。以下に長所を少し整理しますので、ご参考ください:
⦿ 長所:1. Zeissの色彩、Distagon構成のレンズで歪曲が目立たない・2. USB充電に対応・3. 美しい化粧箱とコラボレーションのPDストラップ・4. フルタッチインターフェース・5. 512GBメモリー内蔵・6. Lightroom内蔵、カスタムスタイルファイルとワンタッチ補正に対応・7. 最低感度はISO 80・8. 4.3インチ曲面タッチディスプレイ
⦿ 改善してほしい点:1. コントラストAFが少々遅すぎる・2. 本体唯一のボタンの位置が悪く、サムレストが付けられない・3. 連写はわずか3コマ・4. ファインダーが小さすぎる・5. 操作画面がシンプルすぎて、設定を誤タッチしやすい・6. 編集の設計が直感的でない(ワンタッチ補正はボタンに割り当ててほしい)・7. 高感度の画質は平凡・8. 価格が非常に高い
⦿ ファンの願い事リスト:短い使用期間ではありますが、私の理想のZX-1の姿についてお話しします:1. 外観はZeiss Ikon ZMを参考に、レトロなシルバーとブラックのツートンで・2. ファインダーをなくし、サムレスト、外付けフラッシュ、外付けOVF/EVFなどをアクセサリーで選べる方式に・3. 高速な位相差AFは必須・4. タッチ操作には誤タッチ防止の物理ロックを・5. 分かりやすく直感的なワンタッチ補正と美肌機能・6. もう少しだけ小型化・7. より好ましい撮って出しの色づくり
【総評】
解像感 ★★★★☆・色彩 ★★★★・ボケ ★★★・総合評価 ★★★☆
いずれにせよ、初代機には象徴的な意味と、惜しい小さな欠点がつきものです。それでもZeissへの愛ゆえに、このカメラが大いに売れること、そしてZeissが次の、さらには次の消費世代のカメラやレンズを出し続けてくれることを願っています。





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